各種石材解説・研究

レア度希少性・入手難易度
供給量製品製造可能量
加工難易度加工の難しさ

※現在の状況を個人的主観で表したものです

明神石

レア度:★☆☆☆☆
供給量:★★★★★
加工難易度:★☆☆☆☆

 現代の雄勝石製品に最も多く使用される石材。
 雄勝町 明神地区の山にて採掘され、比較的柔らかく、薄く割りやすい性質で石皿から硯までほぼ全ての製品に利用される。

 雄勝町でもトップクラスの規模を誇り、令和の時代に於いても新規採掘が行われた。一度は閉山したこともあり、石の質が最盛期に比べて扱いづらく、再開発の環境整備も含めて多くのコストが必要とされた。

色合いから『黒系雄勝石』に分類される。

製品例

波板石(浪板石)

レア度:★★★☆☆
供給量:★★★☆☆
加工難易度:★★★★★

 現代ではあまり出回らない、雄勝石の中で最も硬い石材。

 雄勝町 波板地区にて採掘され、その硬さゆえ他の黒系 雄勝石に比べて割れにくく、かなり大きな塊で採掘されていたことから石碑やビリヤード台などにも利用されていた。

 風化すると表面が白化する性質があり、色合いから『白系雄勝石』と分類される。
 さらにクエン酸と反応して急激に白化するためカルシウムの含有量が比較的多いものと考えられる。そのままでは食器として使用するのに汎用性を欠くため、あえて人工的に白化させてから仕上げる等の対策を施す場合もある。

 縞模様のある石と縞模様がない石の、大きく分けて二種類が存在する。
 また、隣の女川町を経由して再度石巻市の稲井地域にまで同じ地層が続いているとされているのだが、同地域の名産である『稲井石』と、この『波板石』は親戚のような関係にある。

 硯作りに於いてはその硬さから『職人泣かせの石』とも評され、雄勝硯産業の最盛期には生産効率の悪さから忌避されていた。
 しかし、現代ではその質が見直され始め、『最上級の硯石』と評されることもしばしば。

 割れにくさや強度を活かした加工が可能。

製品例

唐桑の石(御留石)

レア度:★★★☆☆
供給量:★☆☆☆☆
加工難易度:★★★☆☆

 かの伊達政宗公の命により、伊達藩お抱えの硯職人のみが採掘を許されたとされる所謂『御留山』の石。

  大規模な採掘が行われ、使えないクズ石などが海岸へ捨てられ続けたことで人工的に土地が造成されたという話があるほどである。

 あまりまっすぐには割れず、スレートには全く向かないため終始硯材用として採掘が行われていた。
 街全体で見ても硯だけに使用された採石場はここと、ここの対岸に位置する『硯浜』のみだという。

 現在、2023年に開通した国道398号線の工事の際に岩盤が丁度道路の真下に埋め立てられたことで、当面の新規採掘は見込めなくなっている。

 山の所有者が道路工事の着工直前まで手作業で石を採掘し、貯蔵してはいたものの、全くとは言わないがほぼ一般市場に出回ることはないと思われる。

 反面、国道脇の山の斜面には古い石の残骸をすぐ目の前に見ることができるようになっている。
 ただし広範囲に渡って私有地に当たるため、無断での石材収拾や山への侵入はしないよう注意してほしい。

黒系雄勝石に分類される。

記録写真

硯浜の石

レア度:★★☆☆☆
供給量:新規供給なし
加工難易度:★☆☆☆☆


『雄勝硯』の採石場として最も代表的な黒系雄勝石の採石場。

 唐桑の『御留山』の対岸に位置し、そちらと同様に終始硯材用の採石場として活躍した。

 かつて病院がすぐ目の前に建っており、採掘する重機などの音がうるさいと病院側からクレームがついた程だという。
 御留山の石に比べてまだ素直に割れるようだが、あまり大差ないためかスレート作りには用いられることはなかった。

 かなり柔らかい質で、『豆腐石』などと揶揄されるほどである。それらの硯としての品質はお世辞にも良いとは言えない。
 これには硯産業最盛期の大量生産需要が関係しており、質より量が求められた結果、簡単に彫り上げられる柔らかい石材が好まれたことにより生じた弊害であった。
 これにより年配の方の中には「雄勝硯は品質が良くない」という感想を持つ方もいる。

 硯浜の石全てがそうかというと決してそういうわけではなく

「うちでは比較的深層の硬めの石材を選んで硯を作っていた」

とは『エンドーすずり館』の遠藤弘行 氏の談である。

 慰霊公園の目の前ということで、駐車場より徒歩ですぐに岩盤を触りに行けるほどだが、落石などの危険があるため無闇に近付いてはいけない。
 また、岩盤を故意に傷付けたり、無秩序な石材採取を行ったりすることのないよう、常識の範囲内で周囲を散策しよう。

加工例

大浜の石

レア度:★★★★★
供給量:新規供給なし
加工難易度:不明

 大浜地区から名振・船越地区へ抜ける道の途中にある古い採石場の石。
 大浜地区の地区会長におおよその場所を教わるまでその位置に皆目検討がつかないほどの隠れた採石場である。

 明神・名振と同じく黒系雄勝石であるが、主な用途は明確には分かっていない。他の採石場に比べて規模は小さく、鋸による手引きの痕跡がほとんどのクズ石に見られることから相当古い跡地と思われる。

記録写真

名振の石

レア度:★★★★★
供給量:新規供給なし
加工難易度:不明


 明神山の裏側に位置し、主にスレート用に採掘されていた石。

 海岸側でウミユリなどの化石が発見されている雄勝町でも有数のスポットでもあり、何度か現地調査が行われているよう。

 現地には昔の家屋のものと思しきスレートが散見され、一部を許可を得て頂戴したはいいものの、それが明神産か名振産か、はたまたその他の黒系雄勝石のものかはハッキリとは分からない。

 明神山のほぼ真反対に位置することから、大して差はないとも考えられる。

記録写真

船越の石

レア度:不明
供給量:不明
加工難易度:不明

調査予定

謎。

船戸の石

レア度:★★★☆☆
供給量:新規供給なし
加工難易度:★★★☆☆

『エンドーすずり館』のある船戸地区にて採掘されていた石。

 隣、唐桑地区の御留山から黒系雄勝石の層が続くかと重きいや、以外にも白系雄勝石の層があるらしく、波板石に似た石材がある。
 古い記録では、黒系白系に続く第三の系統である『ネズミ色系』の石材であるとされ、硯石として雄勝石の最上級に位置するとの見解が記されている。

 黄鉄鉱の粒子が多い、いわゆる『金粉入り』と評される波板石に近いが、その量は波板石よりも遥かに多く、まるで夜空に煌めく星々のよう。
 硬さは波板石に遜色なく、やや白系の質が強いように感じられる。

記録写真

水浜の石

レア度:★★☆☆☆
供給量:新規供給なし
加工難易度:★★☆☆☆

 雄勝町内最大の規模を誇った水浜地区にある採石場。

 黒系、白系、ネズミ系の3種が全て存在するとされており、かの東京駅の初代屋根スレートはこの水浜採石場の石材が多く使用されていたとの説もある。

記録写真

分浜の石

レア度:★★★★★
供給量:新規供給なし
加工難易度:★★★★★

 波板、水浜の間に位置する小さな地区の石で、白系雄勝石に分類される。

 さして規模は大きくなく、今のところ波板石と同質で縞模様のないタイプの石材のみが確認されている。

 『潮風トレイル』の道中から一部を見ることができるが、傍から見ると山崩れの跡のようにしか見えないため興味が無い人は気付かないだろう。

登米玄昌石

レア度:★★★☆☆
供給量:★☆☆☆☆
加工難易度:★☆☆☆☆

 登米市登米町にて採掘されていたスレート。
 雄勝産スレートよりも加工が容易で生産量も多く、その総生産量は雄勝以上とも言われている。
 しかし、『雄勝石の名前で販売した方がよく売れる』という理由から、あまりその名が知れ渡ることはなかった。
 雄勝石と違い、穴を掘り進めて採掘する『坑道掘り』という方式が取られていた。
 硯にするのには『金ジャカ』と呼ばれる黄鉄鉱の結晶が邪魔なため活用されなかったようだ。
 現代でもスレート屋根の建物がちらほら散見される登米市に於いて、補修用の未使用品や補修後の残骸のスレートを保有している家もある。
 これを見ている登米市にお住いのあなたの家にももしかしたら思わぬお宝があるかもしれない。
 未使用品があればぜひ買い取らせていただきたいくらいだ。

記録写真